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フィクションです

 

鏡で見る自分の顔面が日に日に歪んでいくような気がしている。
いつまでたっても上達しない、似合わない化粧で誤魔化していた顔面も自意識には見破られていたようで、吐き気と嫌悪がこみ上げてくる朝。
こんな顔で外に晒されなければならない。
他者がどうとかというよりも、自分がまず許せなくて、鏡の前に行く度「気持ちが悪いな」と頭の中でつぶやいている。
ひとつのアイシャドウをなくなってしまうまで使う。
自分の顔なんて誰も見ていないし、視界に入ったとしても数秒足りとも脳のメモリを使わずに消えていくような存在ではあるが、それでも外に出ることに結構な体力を費やさなくてはならない。えいや!と心の中で唱えながら自室のドアを開けています。

 

死ねないから生きているようなものだが。

 

使い古された嘘、と誰しもがわかるような、察しろと言わんばかりの言葉が最新の文明で送られてくるのは現代への皮肉か何かか、と思いながら当たり障りない返信をなんとも思っていないような顔で、最新の文明を使い返答するわけです。
それでもほしいものぜんぶ手の中に入れてしまえるのでしょう。

 

本当に必要なもの、の「本当」など、存在しないホログラムのようなものなので、手を伸ばしつつ最初から掴むことができない存在だとはわかっているものの、現実逃避も兼ねて動く手は相変わらず空を切ることしかできないままの毎日ですが、そちらはお元気ですか。

 

わたしは今日も元気です。